犠牲者達

第一の犠牲者は野鳥達だ。犠牲となった鳥達は今までにおよそ25000羽発見されている。1978年に同じように沈没した油送船アモコ・カディスが出した数は約6000羽。汚染された面積からすると、最後には10万羽に達すると予想されている。おびただしい数だ。
沿岸そのものも大きなダメージを受けた。専門家によると、汚染から完全に解放されるのは10年後以降だとされている。しかも、完全に以前のようにはならない可能性もおおいにあるという。
漁業の方では、1月6日に貝類の販売禁止例と同時に釣りの禁止例も出された。漁業で生活を営んでいる人達にとって、汚染がなくなるまでのしばらくはとても厳しい状況になる。
エリカ沈没の数日後には、例の嵐による被害もこの地域を襲い、住民達にとっては悪夢の年末となった。そんな住民達の怒りと悲しみは治まらない。1月15日には、Croisic市で"Collectif anti maree noire"と称した約6000人近くの人による汚染への抗議のデモが行われた。
しかしこの悲劇の中で心が少し温まる話がある。1月5日、Saint-Hilaire-de-Riez市に郊外の若者達総勢58人が、沿岸掃除の手助けに来たという。彼らのおかげで、市役所役員達が嵐による被害の処理の方へ集中することができた、と市長はほっとしていたそう。
住民達への補償金の支払いには、少なくとも数ヶ月がかかると言われている。

政府の動き

1月12日、リオネル・ジョスパン首相は、被害を受けた漁業関係に30億フラン出資すると発表。内務省大臣ジャン=ピエール・シュベヌマンは、3月末までに沿岸が完全に洗浄されるべき、と、790人の援助追加を予定している。この計画では総額8億フランがこのエリカ事件に出資されるだろうと予想されている。今現在すでに4億フラン程が消費された模様。 1月20日には、海上の安全性と汚染についての調査委員会の設立へのゴー・サインが出されると見られている。


汚染の最もひどい地域のひとつであるBelle-Ile(美しい島、という意味)では、150人程の軍隊と300人程のボランティアの人達が汚染除去に励んでいる。すでに取り出されたゴミは約1700トンになるという。ロワール・アトランティック県会では、1年以上失業中である人達にパート勤務として沿岸送掃除への参加を提案している。ちなみに手当金は1ヶ月800フラン、と少ないように感じる。
黒く汚れた海岸を目の前に充分なシャベルやかっぱも供給されていなかった住民のひとりは、1978年のアモコ・カディスが沈没した時から一体どれだけの安全性の確認と技術が進歩したのだろうか、と疑問に思ったそうだ。政府や各協会、そして石油会社達は、これからもう2度とこのような汚染が起こらないように一層注意を払わねばならないだろう。犠牲となるのは彼ら自身ではないのだから。

関連サイト:
www.mareenoire.org
www.belle-ile-en-mer.org/Maree
www.radiophare.net/totalboycott


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Paris Actu 2000